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NAKANIWAイベント「“みらいのワークスタイル”ワークショップ」レポート

作成者: NAKANIWA|2024.09.27

中央⽇本⼟地建物グループのR&拠点「NAKANIWA」は、森林をイメージしたユニークなワークプレイスであり、オフィスの付加価値を高める空間づくりの実験の場でもあります。
このNAKANIWAで行われたワークショップイベント「“みらいのワークスタイル”ワークショップ」を取材してきました。

 

みらいのワークスペースのひとつ、REVZO虎ノ門を見学

2024年7月、イベント「“みらいのワークスタイル”ワークショップ」が開催されました。参加者の集合場所は「REVZO虎ノ門」。この日のテーマ“みらいのワークスペース”の参考事例として、REVZO虎ノ門を見学することからスタートしました。開放的な空間とソファ、ファミレス席、テーブルなどさまざまなスタイルのコミュニケーションスペースが揃っており、ワークショップでのアイデアのヒントにもなったのではないでしょうか。

瞑想で気持ちの切り替え「常識を覆すオフィス」に触れ、いざワークショップ開始

場所を「REVZO虎ノ門」からNAKANIWAへ移し、席に着いた参加者のみなさんは、中央日本土地建物 事業統括部イノベーション開発室の松井さんによるNAKANIWAの紹介の後「せせらぎメディテーション」でリフレッシュしました。目を閉じて、鳥の声や水のせせらぎなどNAKANIWAならではの環境音にゆっくり耳を澄ませて、リラックスしていきます。

和やかな雰囲気の中、次はNTTデータ経営研究所 地域未来デザインユニットの三上さんによるブレイキングセッションが行われました。「わたしの常識を覆した世界のオフィス5選+α」と題し、世界各国から三上さんがおすすめする斬新なオフィスが紹介されました。

例えば、大手文具メーカーKOKUYO株式会社の「ライブオフィス」は、壁いっぱいの書棚に囲まれた空間や、グリーンが多いカフェのような空間など、さまざまなスタイルが見られます。ショールームではなく実際のオフィスで行われるさまざまな空間実験もユニークで、予約制で見学できるところも魅力的です。

続いて紹介された、岩が剝き出しになった洞窟のようなオフィスは、データセンターなどを提供するスウェーデンの大手IT企業Bahnhofが所有するもので、冷戦時代の核シェルターを基にしているのだそう。

+αとして紹介されたのは「自然の中に入り込むオフィス」です。スペイン・マドリードの森の中にある建築事務所Selgas Canoの半地下のオフィスは、ちょうど目線の高さがグランドレベルになっていて、小さな生物の目線で仕事ができるとのこと。三上さんはそのオフィスにNAKANIWAと通じるものを感じて紹介されたそうです。

このように、斬新なオフィスが紹介されるたびに、参加者からは驚きの声が上がり、オフィスという概念を覆すような、新しい発想のヒントになったのではないでしょうか。

■ KOKUYO株式会社
THE CAMPUS|ようこそ、みんなのワーク&ライフ開放区へ
https://the-campus.net/about/

■ Bahnhof(スウェーデン/ストックホルム)
https://bahnhof.se/

■ Selgas Cano Architecture Office(スペイン/マドリード)
http://www.selgascano.net/

次はいよいよ、NTTデータ経営研究所 地域未来デザインユニットの江井さんのファシリテートによるワークショップのスタートです。参加者はテーブルごとに「ウェルビーイング」「ソーシャル」「クリエイティブ」という3テーマのチームに分けられます。

ウォーミングアップも兼ねて、まずは参加者が個々に「ウェルビーイング・ソーシャル・クリエイティブからかけ離れた最悪のオフィス」とはどのようなものかを考える時間が設けられました。「ゴミが散らばっている」「暑い・寒い」「うるさい」など、さまざまな要素が飛び出します。
その次は「ウェルビーイング・ソーシャル・クリエイティブな理想のオフィス」のアイデアをどんどん出していきます。「居心地がいい」「挨拶しあう」「無重力」「筋トレできる」など、ユニークな要素もありました。

そしてこの個人ワークは、グループワークの準備も兼ねていました。最後に「1人ずつ個人で考えた理想のオフィス」をチームにシェアし、最も共感を集めた参加者がチームリーダーとしてチームの議論進行役に任命されます。

みらいのワークスペースでは、誰がどんな場所でどんな活動をしている?

ここでいよいよ「ウェルビーイング・ソーシャル・クリエイティブな未来のワークスタイル」を考えるセッションに突入します。

  • それはどんな場所?
  • その場所でどんな人がどんな活動をしているか?

チームで話し合い、この2つの質問に答えながら、3チームそれぞれで未来のワークスタイルを具現化していきます。

まずは「それはどんな場所か?」について話し合います。与えられた時間は3分ですが、参加者は徐々に緊張もほぐれ、身振り手振りやちょっとした冗談なども交えてどんどん話を進めていきます。「バーチャル出社はどうか?」「情報が多い場所はいいけれど、あり過ぎるのは……」など、興味深い声が聞こえてきます。

続いては「その場所でどんな人がどんな活動をしているか?」。江井さんは「イメージの例のひとつとして、『蝶ネクタイをしたオランダ帰りのファシリテーター、その肩の上にティンカーベルのような姿のAIがいて、歩きながら会話をするだけで書類ができちゃう』とか……」と、まるでファンタジー映画のようなサンプルを示しました。参加者も「ストレスのないコミュニケーションが必要」「体の動きを交えた空間は?」と、アイデアを広げていきます。

そしてあっという間に、各チームの発表の時間がやってきました。発表の内容はグラフィックレコーダーの西川真由さんがビジュアル化し、ソーシャルグッドプロデューサーの石川淳哉さんも交えてさらにアイデアを広げていきます。

働くこととウェルビーイングは組み合わせが難しい?

発表のトップバッターは「ウェルビーイングな未来のワークスタイルを考える」チームです。
「どんな人か?」については「ずっと同じ会社で同じ人たちと交わっていると凝り固まってくる」ということで、まずは「いろんな業種の人が、年齢や言語も関係なく交わっていくところがウェルビーイング」だと考えたそう。
一方で「同じ感覚や趣味を持った人同士の交わりもまたウェルビーイングに繋がるのでは」というアイデアも出たそうで、石川さんが「多様性と協調性が両方保てる、シーンによって切り分けられるということですかね」とまとめました。

「どんな活動をしているか?」については「時間に追われず自由に楽しいことをしている」イメージを発表されました。これについては石川さんが「ウェルビーイングって心と体が良い状態のこと。それとワークを組み合わせるのは非常に難しいんです。ここにクリエイティブな要素が必要だという気がしますね」とアシストします。

「どんな場所で?」については「どこで働いてもいい、駅で降りるといろんなところにいくらでも働いていい場所がある、家族がずっと身近にいられる、何でもそろっていて利便性がある、テーマパークのように、日々いろいろな場所を選べて切り替えができる……」といったアイデアに続いて「取引先と一緒に仕事をするのは1時間だけだったとしても、その人たちとずっと一緒にいられるような場所」というユニークなイメージが飛び出しました。

ここで石川さんは、参加者に現在の働き方を尋ねます。副業が許可されている人は4割ほど、就業場所が自由だという人は1割ほどでした。「どういう属性の人たちがこういうことを考えたかも重要」というコメントに参加者たちはハッとさせられたようです。

チームメンバーから最後に「話にも出た通り、“ウェルビーイング”と“働く”って正直すごく相性が悪いんだろうなとは思います。あまり働かないで済むといいな……という発想もある一方で『ウェルビーイングなワークスタイル』というと、働くことを促進するような意味も含まれていて、結果的に『働きやすいから働き過ぎてしまう』ことにも繋がるなと。
衣・食・住のように、日々の日常が『会社へ行くことでおのずと健康に繋がる』とか自然にできる状態がいいのかな?と。『会社から“やらされている”状態はウェルビーイングじゃない』と思うので、そういう難しさを感じながら議論しました」という葛藤の様子が伝えられました。

石川さんも「どこでも自分自身でいられるって大事ですよね。今、家にも仕事が入り込んでくるし、オフィスにもプライベートが入り込んでくる。だから発想も変えていく必要があるということがディスカッションで見えてきたと思います」と応じました。

「ウェルビーイングな未来のワークスタイル」。垣根を越えて楽しめる様子はテーマパークにも通じるものがあるようです。

実は似ているポイントも多い「ウェルビーイング」と「ソーシャル」

さて、続いては「ソーシャルな未来のワークスタイルを考える」チームの発表です。
「どんな活動をしているか?」については「会社や組織の枠を超えて繋がれる、年齢に関係なくみんなが活用できる場が開かれている、様々な人が関わりながら成し遂げられる」などのアイデアが。技術的な面では「異なる国の人がそれぞれの言葉で喋る、それが自動で翻訳されて、自分が理解できる言語でコミュニケーションできる」といった内容が挙げられました。

「どんな人か?」については「特定の人ではなく、いろんな人がそれぞれやりたいことを持ち寄れるといいんじゃないか」とのこと。江井さんが「車椅子の方もいるかもしれないし、それを課題として体験する人もいるかもしれないってことですね」と具体例を挙げます。

また石川さんは「短い時間の中でまとめられたにしてはバランスがいい!とてもソーシャルな要素が豊富でした」と絶賛。

「どんな場所で?」については「場所はどこでもかまわない。どこからでも入れる環境であったり、隣の空間と繋がっていたり」という「バーチャル出社」のアイデアが展開されました。

江井さんは「場所の話になるといきなりウェルビーイングと似てきましたね」と感じた様子で「石川さんはどんな場所で働いているんですか?」と質問します。石川さんは「富士山の麓で全国の人たちと繋がって、いつでも成果が出せたらみんなでシェアするプロジェクトスタイル」だそう。

チームメンバーからは「老若男女問わず思いが一緒で、同じ方向をみんなで向いていけるようなら、ストレスのない良い働き方ができるのでは?」というコメントや「ウェルビーイングと近いというのは同感。世にいうダイバーシティ&インクルージョンのようなことを考える中で、誰でも活躍できるようにするために『ウェルビーイングであること』は十分条件ではないが必要条件ではないだろうかと思っている」といったコメントもありました。

「ソーシャルな未来のワークスタイル」。快適な環境も欠かせません。

集中できること、刺激を受けること……クリエイティブな状態はひとつではない

最後を飾るのは「クリエイティブな未来のワークスタイルを考える」チームです。
まず「クリエイティブな状態とは?」から考えたこのチームからは「自分にとってストレスがなく、好きなことに集中できることと、少し不自由な場所で自分の考えもしなかったものに五感が刺激されること」という2つの意見が出たのだそう。

その上で「どんな人がどんな活動をしているか?」については「年代・世代の制限がない、子どもが思いのまま遊んでいる、お年寄りがくつろいでいる、お酒を飲みながら仕事をしている人もいる、本当に多様な人たちがそこに存在するのが基本的にはクリエイティブな場所」といいます。

なぜ多様な人たちが共存しているのかについては「自分が予想もしなかったところからアイデアが出てきたり、自分よりも知識を持った方々がいる中で気づきがあったり、日常と対極にある、いわゆる昼からお酒を飲めたりするような、自分が好きな状態、ストレスがない状態で仕事できる場所」が理想的な「クリエイティブな場所」だという話になったのだそう。

ここで江井さんは「集中と刺激……石川さんはどっちを重視します?」と尋ね、石川さんも「僕のクリエイティブはデザイニングとイノベーティブが合わさって創造的になる感じなんですよ。まず、みんなでクリエイティブって何?って話をしておくと少し答えが変わるかなと思いました。今日せっかく社会課題解決の話をしているので、そこに関する議論がもうちょっと出てくると良かったかな」と応えます。

「どんな場所で?」については、「ストレスがない場所であり、五感を刺激する場所」とのこと。具体的には「没入空間というか、いわゆる自分の考えていることに集中できる場所と、あらゆる世代がいて、いろんな人がいる共有スペース。これらに繋がるたくさんのドアがあって、両方が共存している場所」なのだそう。
没入空間は「自分が一番ストレスなく働ける場所」であり、共有スペースは、それよりも多少不便な環境があることで「自分が意識していなかった考えに触れられる場所」。不便な環境にフォーカスを当てることで「こうだったらいいのに」という考えが生まれるのだといいます。

石川さんは「この提示は僕とても好きです。クリエイティブだね」と絶賛。「多少不便な環境、ストレスがある環境がクリエイティブということとか。没入空間と共有スペースがあるとか、なんかちょっとドキドキしますね」と目を輝かせました。

「クリエイティブな未来のワークスタイル」。集中も刺激も、どちらもクリエイティブ!

まとめ

イベントの最後には、このワークショップが今後2024年9月から2025年3月にかけて、全5回のシリーズとして続くというお知らせがありました。新しいワークプレイスづくりに繋がるそのシリーズ名は「TORANOMON SOCIAL LAB~まちの価値を高める、新しいワークプレイスづくり~」。この日のセッションから生まれたグラフィックレコードなども引き続き活かしながら、これからのまちづくりの、ワークプレイスを通じたアプローチを探っていくということで、期待も高まりながらの大団円となりました。