NAKANIWA イベント「ToranomonFreeMagazine 60min 特別企画『まち×愛着』~エミーゼニーワークショップ~」レポート

NAKANIWA イベント「ToranomonFreeMagazine 60min 特別企画『まち×愛着』~エミーゼニーワークショップ~」レポート

中央⽇本⼟地建物グループのR&D拠点「NAKANIWA」は、森林をイメージしたユニークなワークプレイスであり、オフィスの付加価値を高める空間づくりの実験の場でもあります。
このNAKANIWAで虎ノ門エリアに縁のある参加者を集めて行われた「Toranomon FreeMagazine 60min 特別企画『まち×愛着』~エミーゼニーワークショップ~」を取材してきました。

 

虎ノ門の森ではたらく「NAKANIWA」

NAKANIWA は、中央⽇本⼟地建物グループが⽬指す「新しいワークプレイス」および「オフィスの付加価値向上に資する空間」を開発するためのR&D拠点です。
2023年10月のオープン以来、特に「インフォーマルな空間で⽣まれる付加価値」に着⽬し、社員が実際にワークプレイスなどとして利用する中で、居⼼地の良さやそこから誘発されるコミュニケーション・創造性・⽣産性・エンゲージメント向上などの可能性を検証しています。
また、山梨県⼭中湖村にある中央⽇本⼟地建物グループ保有林の間伐材を⽤いた内装づくりや、森をイメージした植栽計画を通して、利⽤者が森や⾃然とつながるきっかけづくり、環境配慮やサステナビリティに対する意識醸成、そこから⽣まれる交流発展を図っています。

虎ノ門への愛着を確かめ合う「ToranomonFreeMagazine 60min 特別企画『まち×愛着』~エミーゼニーワークショップ~」

2024年1月、NAKANIWAで「ToranomonFreeMagazine 60min 特別企画『まち×愛着』~エミーゼニーワークショップ~」が開催されました。このイベントは、金融、テクノロジー、心理学それぞれの領域の最先端の知識をおりまぜた、「おカネ」にまつわるワークショップ「エミーゼニー」をアレンジしたものです。人を幸せにするおカネのコトについてゲームを通じて考え、感じ、語り合うことができるワークショップで、参加者は、価値観と行動の変化を実感できるとされています。 この日は虎ノ門エリアを拠点に就労・活動している21名が参加。4時間半をかけて、虎ノ門の街について考え、語り、虎ノ門への愛着を確かめ合いました。

クウジット株式会社の末吉 隆彦さん(スエマン)、株式会社URUUの江上 広行さん(えがちゃん)をメインに、グー・チョキ・パートナーズ株式会社の小野寺 学さん(グーさん)も加わった3名が、今回のワークショップをナビゲートしました。
参加者はA~Fの6チームに分かれ、架空の「会社」を作り、他のチーム(会社)と取引しながら虎ノ門で会社を経営する……というシミュレーションゲームを進めていきます。

「ToranomonFreeMagazine 60min 特別企画『まち×愛着』~エミーゼニーワークショップ~

このワークショップを通じて、参加者は感謝をつなぐ「ありがとう極大化のおカネ」(エミー)と、資本効率を追求する「もうけ極大化のおカネ」(ゼニー)という、2つの異なる“おカネ”の世界を体験しながら、地域経済やまちおこしについて考えていきます。

まずは「もうけを大きくする」会社経営をシミュレーション

ワークショップの前半では、資本効率を追求する「ゼニー」の世界を体験するセッションが行われました。参加者はテーブルごとに決められた自動車部品を製造する「会社」を設立します。

それぞれの「会社」は自社の部品を販売するだけでなく、他社の自動車部品を仕入れて新しい自動車を開発します。開発した自動車は、グーさんやスエマンさんが経営する「商社」に買い取られ、各社は大きな利益を追求し競い合います。会場にはアップテンポなBGMが流れ、ビジネスを拡大しようという活気に満ちています。

各参加者の自己紹介に続いて、「会社」ごとに経営会議を開催し、社名や社長、各社員の役割を決定。虎ノ門にちなんだ「タイガーカーズ」や、和やかムードの「おにぎり株式会社」など、個性あふれる社名が並びます。

会社経営をシミュレーション

自動車の「開発」は、社員がブロック玩具を組み合わせて行います。限られた時間でより多くの車を開発しようと、参加者は真剣にブロックと向き合っていました。
また、どのような自動車が売れるのか、他社にはない価値をどのように生み出そうか……と社員同士の話し合いも尽きません。あまりに議論が白熱して、「自動車を作る時間が足りない!」という声が聞こえることも。

真剣にブロックと向き合う参加者

デザインが洗練されていて、機能が優れていても、実際に走行できる自動車でなければ買い手がつきません。中には、販売前の「車検」で不合格となる自動車もあるなど、走行をテストする「車検場」は大いに盛り上がっていました。
また、自動車の魅力を伝える「営業」の役割も重要なポイント。プレゼンテーションで熱弁をふるった「会社」の自動車は、より高額の買取価格が提示されたようです。

自動車の魅力を伝える「営業」の役割

ワークショップ前半の最後は上期決算を行い、「会社」の収支を決定します。売り上げ1位は自動車の開発台数が多かった「タイガーカーズ」、利益1位は社長が先頭を切って人件費を削減した「TGM(タイガーゲートモーターズ)」となりました。対照的に人件費が最も多かったのは「BRT」。さて、この結果が後半にどう影響するのでしょうか。

上期決算を行い「会社」の収支を決定

ワークショップの前半が終了すると、社員には社長によって決められた給与が実際に「ゼニー」で支払われました。休憩時間に参加者は手にしたゼニーを使って「スマホ」「旅行」「習いごと」「寄附」などの様々なエレメントを自由に購入することができます。
これには参加者も「買い占めちゃおうかな」「別荘を買って二拠点生活を始めよう!」などと、ウキウキで買い物を楽しんでいました。

給与が実際に「ゼニー」で支払われました

虎ノ門の経済を盛り上げ、今よりさらに愛着の持てるまちにするには……!?

ワークショップの後半では、感謝をつなぐ「エミー」の世界も加わったミックスドセッションです。会場の中央には虎ノ門を模したブロック玩具が設置され、参加者は先ほどの「会社」で手がける「まちのための事業計画」を考えていきます。
事前に参加者からの意見を集めてボードにまとめられていた「虎ノ門の好きなところ」や「虎ノ門に欲しいもの」を踏まえて、ブロック玩具で作られた虎ノ門をどのように開発し、どのような「まち」にしていくかを考えていくのです。

ブロック玩具で作られた虎ノ門

前半で自動車を買い取っていたグーさん、スエマンさんたちの商社は、このセッションでは「事業計画」へ出資する「投資家」になりました。「まちのためになるかどうか」によって会社への出資額を決定するのです。

「まちのための事業計画」を策定するうえでヒントになるのが、参加者から集まった「虎ノ門の好きなところ」と「虎ノ門に欲しいもの」の数々です。
例えば好きなところは「南桜公園」「ランチが美味しい」「オフィス立地としてのブランド力」など……まちへの愛着が感じられます。

一方、欲しいものは「映画館」「銭湯・サウナ」「水族館」など。どれも虎ノ門から近隣へ少し足を伸ばせばありそうな施設ですが、こうした声を聞くと改めて「それでもあえて虎ノ門に欲しい」ものが見えてきます。

「虎ノ門の好きなところ」と「虎ノ門に欲しいもの」

大好きな“虎ノ門のまち”のことですから、経営会議や会社の枠を超えた集会が活発に行われ、それぞれが虎ノ門の「まち」について語るストーリーは徐々に熱を帯びてきます。
投資家へのプレゼンテーションもアツいものに!会場内は、虎ノ門への思いであふれ出し、前半の自社の利益を追求した自動車開発のゲーム時とは違う、おだやかな賑わいで満たされていきます。

投資家へのプレゼンテーション

虎ノ門の妖精こと「カモ虎課長」は、「痛風腰痛持ち、裸一貫でたたかうサラリーマン」として、2024年度から「港区観光大使」も務める人気者。ワークショップ中盤、満を持して登場したカモ虎課長、参加者のアツい様子をゆる~く見守っていました!

虎ノ門の妖精こと「カモ虎課長」

出資を受けた事業計画はブロック玩具によって具体化され、テーブルの上の「まち」の様子も次第に変化していきました。
おしゃれな野外映画館や水族館といった魅力的な施設から、生活に欠かせない病院、産業を生み出す農場などさまざまな施設ができ、下期の決算を迎えます。

テーブルの上の「まち」の様子

「まちの格差をなくして、一体にしたい」という共通のビジョンで結びつき、共同企業体を形成した「おにぎり株式会社」と「KSP」の2社が大きな利益を出した一方、上期利益1位だった「TGM」はその利益を施設の建設で使い切り、「目的は果たした」として、会社を解散しました。

決算の後は、前半終了後と同様にエレメントの購入を楽しんだり、出来上がった虎ノ門の「まち」を眺めたりする時間が設けられました。「まち」の写真を撮って楽しむ参加者もいて、参加者はテーブル上に作られた虎ノ門の「まち」に愛着を深めていました。

出来上がった虎ノ門の「まち」

経済活動には、事業で金銭的な不安を解消していく「ゼニー」の世界と、自由な発想で社会課題を解決していく「エミー」の世界という、異なるアプローチがあります。参加者はそれぞれの世界について、さまざまな思いがあったようです。

終了後のアンケートに寄せられた参加者のコメントを見てみると、「お金だけ、やりたいことだけのまちづくりはだめ。身に染みる思いだった」と、両方の世界を体験することで感じた人もいれば、「共同作業したことで相手を知ることの大切さを学んだ」、「思いを共有してひとつのものをつくることの楽しさは学びになった。それを実現するために伝えることや聞くことの大事さを改めて知ることができた」と、協力し合うことについて学べたという人も。

また「ブルーオーシャンをみつけて、周りが追いついてこられないスピードで取り組んでいくべきところは学びになった」、「短い時間でやっていくので、悩むより行動しようという感じ。テンポよく動くことは大事だなと思った」と、あっという間に過ぎたワークショップのスピード感を振り返る声もありました。

さらに「参加者全員が⻁ノ門で働いているため、共通の話題で盛り上がれたのは楽しかった。親近感が湧いた」、「業種も世代も違う人とプロジェクトを進められて新鮮だった」という意見もあり、交流そのものに手ごたえを感じた参加者も多かったようです。

地域の人たちとのつながりを大事に、虎ノ門のまちを「共創」したい

今回のイベントに企画・運営として参加した中央日本土地建物の下向さん、小宮さんに話を聞きました。

「当社では、虎ノ門エリアのエリアマネジメントに資する取り組みとして2020年から年4回、フリーマガジン『ToranomonFreeMagazine 60 min』を発行しています。昨年10月にNAKANIWAというR&D拠点を開設したことをきっかけに、施設テーマのひとつでもある『with human(コミュニケーション創出)』の分野において、虎ノ門地域およびコミュニケーション活性化に繋がるイベントとして検討を開始しました。
また、本年1月22日には『虎ノ門一丁目東地区第一種市街地再開発事業(以下、虎一東)』が着工しています。『ともに考え、ともに創り、ともに未来へ』という当社グループの企業理念を踏まえ、エリアで働く人に集まっていただき虎ノ門の未来を一緒に考えていけるような企画として、今回のワークショップを企画・開催しました。
NAKANIWAを会場としたことで、当社が虎ノ門にこうした空間を創っていることにも興味を持ってもらうきっかけになりましたし、イベントも盛り上がって良かったと思っています」(下向)

「虎ノ門は当社にとって本社や複数の賃貸ビルに加え、今後の開発プロジェクトも抱える重要エリアであり、地元の一員として街を地域の方々と共創していきたいという思いがあります。
『ToranomonFreeMagazine 60 min』の発行もそのような考えの一環で行っているものであり、取材でつながった地域の方々と今回のワークショップを通して『虎ノ門を共創する』という思いが、少しでも共有できたのであれば幸いです」(小宮)

まとめ

このワークショップでは、虎ノ門の現状や未来を語り合うだけでなく、実際に資本を作り、事業計画を立てることで、まちづくりをシミュレーションしました。後半のミックスドセッションでは共同企業体を作り、事業を拡大する参加者もいました。それぞれが多様な視点からまちづくりについて考える機会となったようです。ワークショップの後の懇親会では、参加者の虎ノ門への愛着があふれ、大盛況となりました!

NAKANIWA

ライター:NAKANIWA

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