NAKANIWAイベント「みんなで考える“みらいのコミュニティ” デザイン研究所」第1回レポート

ワークショップイベント「みんなで考える“みらいのコミュニティ” デザイン研究所」第1回レポート

中央⽇本⼟地建物グループのR&D拠点「NAKANIWA」は、森林をイメージしたユニークなワークプレイスであり、オフィスの付加価値を高める空間づくりの実験の場でもあります。 このNAKANIWAで行われる全5回のワークショップイベント「みんなで考える“みらいのコミュニティ” デザイン研究所」の第1回目を取材してきました。

 

みんなで考える“みらいのコミュニティ” デザイン研究所

2024年9月、NAKANIWAで全5回のワークショップイベント「みんなで考える“みらいのコミュニティ” デザイン研究所」の第1回目が開催されました。2024年7月に開催された「みんなで考える“みらいのワークスタイル”ワークショップ」のセッションを生かしながら、これからのまちづくりを通じたコミュニティへのアプローチを探っていくシリーズです。単なるワークショップにとどまらず、最終回で提案された内容は精査・選択した上で2025年虎ノ門エリアにてトライアルを実施することを目指しています。第1回目のワークショップでは、これから検討するプロジェクトの「テーマ」を皆さんと一緒に考えます。

チェックイン&ブレイキングセミナーで、肩書を外して自由な発想へ

コミュニティづくりに関心を持つさまざまな参加者が集まったこの日、まずはチェックインとして、NTTデータ経営研究所 地域未来デザインユニットの尾崎さんのリードでミニゲーム「紙渡し」が行われました。数名ずつのチームに分かれ、両手の人差し指だけを使って1枚の紙を落とさないように受け渡す……というものです。参加者たちは事前の作戦会議から徐々に打ち解け始め、受け渡しの際も、紙を落としてしまい「あぁ!」と嘆いたり、窮地を上手く切り抜け「おぉ……!」と感心したり、タイムアップと同時に拍手が湧き起こったりと、大変盛り上がっていました。

チェックイン&ブレイキングセミナー

次は同じくNTTデータ経営研究所 地域未来デザインユニットの山下さんによるブレイキングセミナーです。本ワークショップのテーマに合わせ、世界各地のユニークなコミュニティが紹介されました。

認知症当事者がスーパーマーケットや映画館もある小さな“村”で自由に生活できるというオランダの介護施設「ホグウェイ」。大麻の売買ができる一方で、ペットを鎖(リード)で縛ることは禁止……といった、政府から独立した独自のルールにのっとって人々が暮らす、デンマークのヒッピー自治区「クリスチャニア」。砂漠の真ん中に自由とアートを愛する人々が集い、年1回、1週間のあいだ反商業主義的な共同生活を送るというアメリカのフェスティバル「バーニングマン」。夫婦2人で一大農園を作り上げ、ドキュメンタリー映画『ビッグ・リトル・ファーム』のモデルとしても知られるアメリカの「アプリコット・レーン・ファーム」と、テーマも価値観もさまざまなコミュニティが次々と登場します。

世界各地のユニークなコミュニティを紹介

コミュニティを「生み出す」「大きくする」「アクションする」

続いて、NTTデータ経営研究所 地域未来デザインユニットの江井さんのファシリテートによるワークショップのスタートです。「参加者名簿を見ましたけれども、様々な肩書の方が参加されているようで面白いですね」と江井さん。ご自身もコンサルタントとして「社会に良い仕事をする」ことを心がけているそうです。ここから、ソーシャルグッドプロデューサーの石川淳哉さんもコメンテーターとして加わりました。

参加者は「コミュニティを生み出す」「コミュニティを大きくする」「コミュニティがアクションする」という3チームのうち1つを選んで所属することに。

チーム選びに先駆け、江井さんがワークショップの趣旨として「なぜコミュニティづくりに取り組むのか」を語りました。
中央日本土地建物は虎ノ門で「虎ノ門一丁目東地区第一種市街地再開発事業」に取り組んでおり、「INCLUSIVEGATE」をコンセプトに、虎ノ門に様々な出会いと新しい閃きを生み出す次世代型ワークプレイスと共創の場を創出し、人・情報・技術を世界へと発信していきます。2~5階には「(仮称)虎ノ門イノベーションセンター」を導入し、官民共創により、社会課題解決と経済発展を両立した社会的インパクトにつながる取り組みの創出・活性化を目指します。
同社は虎ノ門に「社会性と経済性を両立する『ゼブラ企業』と呼ばれるような会社が溢れるようにしたい」と考えているが、自分たちだけで実現できるかといったら、そんなことは決してない。そこでさまざまな方々と一緒に取り組み、推進できるコミュニティを作りたいという思いが、このワークショップシリーズにつながっているということを伝えました。

ワークショップ

全5回のワークショップで「共に考える」6チームを結成

江井さんのメッセージを聞きながら参加者は自分が所属したいテーマに投票し、その結果「コミュニティを生み出す」2チーム、「コミュニティを大きくする」2チーム、「コミュニティがアクションする」2チームが結成されました。

まずは、これから全5回のワークショップを共にするチームメンバーへ自己紹介。会社・仕事、出身地、ライフワーク、趣味、今日ここへ来たきっかけ……人数の少ないチームは、他のメンバーからの質問を受けたりして、少しずつお互いのことを知っていきます。

チームメンバーへ自己紹介

自己紹介の後は、それぞれが「チームのテーマに関して、自分や、自分の会社は何ができそうか」を2分かけて考え、さらに1人ずつチームメンバーにプレゼンテーションしていきます。江井さんからは「早く終わったら、質問や、感想を伝えたりしてください」という指示も出ました。時間を十分に使って、このメンバーで何ができるかを考えていきます。

「コミュニティを生み出す」ためにそれぞれができることは?

チームの結束も高まったプレゼンテーションの後は、各チームの代表がメンバー全員のプレゼンテーション内容をまとめて発表。各チームの発表内容には石川さんからのコメントが入ります。
石川さんはここまでの様子から「今日ここにいる人たちがこのメンバー同士で何か始めるのかもしれないし、誰かが手を挙げて旗印を立てて、それにみんなが集まってプロジェクトが起きるかもしれない。そんな、なんだかすごいエネルギーを感じられてうれしい」とすでに良い感触を持っている様子をのぞかせました。

プレゼンテーション

発表のトップバッターは「コミュニティを生み出す」チーム1です。「コンサルらしく『企画を出します』という方や、『アプリを中心にデジタル的にやろう』という話、『むしろアナログが重要』という話まで、さまざまな視点からの意見が出ました」といいます。
石川さんから「ネクストステップは何が必要なのですか?」と問われると、「『一緒にやりたい』という仲間集めと、チーム外も含めたさまざまな人の力をつなげること」と応じ、また「出てきたさまざまな意見の中から、1つを選びますか?複数の意見を合わせるイメージですか?一度捨てて新しいものを生み出しますか?」と問われると「複数の意見を合わせます。出てきた意見の中で『これらのアイデアは一緒にできそうだね』という話はすでにあった」と答えました。

チーム1

「コミュニティを生み出す」チーム2は、「個々の仕事を生かした、オリジナリティのある提案があった」といいます。メンバーそれぞれの得意分野が異なるので、通信やイベント企画、コミュニティ形成などさまざまな提案があり「出てきた提案をどうやってまとめていくかというところで、ちょっと頭を悩ませているけれど、上手く融合できたら」と今後への期待も述べられました。

チーム2

石川さんは「人生と仕事が100%かみ合っている人は、自分の仕事の範囲からアイデアを出し合えばいいと思うんですけど、そうでない場合は、一度『人間として社会課題に向き合ってアイデアを出していく』という作業があってもいいかもしれない」とアイデア出しの観点からフォローしていました。

「コミュニティを大きくする」ために必要な視点とは?

続いては「コミュニティを大きくする」チーム1の発表です。こちらもやはり参加者の会社・仕事の内容が前面に立ったようで、「不動産やゼネコンに勤める人からは、『大きくするためには、そのための場が必要。魅力のある場があれば、人が集まってきて、コミュニティも自然と大きくなるのではないか』と話があった。『人を集める、つなぐことを得意としているので、それで大きいコミュニティを形成していきたい』という話もあった」といいます。

「コミュニティを大きくする」チーム1

石川さんは、コミュニティを形成するユーザーのことが気にかかったようで「最近僕は『そのコンセプトは愛されるのか、そのコアコンピタンスやパーパスは応援してもらえるのか』という視点がとても重要だと感じていて。次につなげていく時にそういう視点も取り入れていると、提案される技術や、人をつなぐ役割の方々が活きてくると思う」とアドバイスしました。

「コミュニティを大きくする」チーム2は「コンサルタントやメーカー、デジタルなど、メンバーの仕事が多岐に渡る中で、それぞれの得意分野を活用すればいいのではないか」という結論に至ったといいます。
そして「ネットワークを利用したり、集まった人の共通点、例えば音楽など共通の趣味を活用してそのテーマと人を掛け合わせたりすることで、コミュニティをさらに大きくできるのではないか」と続けました。

「コミュニティを大きくする」チーム2

石川さんは、こうしたワークショップが自己紹介に終始しがちな状況を挙げ「その次の議論に進んでいる感じがして、みんな素晴らしいな」と称賛します。さらに「自分たちの得意なものを紹介して、それが集まれば成功するんじゃないかというだけでなく、購入する、応援する、友達になる、驚きを得る、今までにない経験をするなどの仕掛けが要る。そこで重要なのが創造力だと思うんですよ。クリエイティビティがそこにあるのか。ここからこのチームがどうやって創造力を身にまとうのかという次の段階に期待しています」とエールが送られました。

「コミュニティがアクションする」を、「アクションの幅」まで考える

「コミュニティがアクションする」チーム1からは、「やはり自分たちのチームでも、自身の職種から発想している」と、他チームと同じ流れで話が進んだことが告げられます。 その中で「ワークプレイスを企画されている方は『コミュニティマネージャーを置くことで、意思統一を図っていくことがアクションにつながるよね』、コンサルの方だと『大企業を巻き込んでいく、それなら自分のコミュニティを使えるよ』、エンジニアの方だと『電気設備を使って発信していく』という話がありました。これをどうやって次回のプレゼンテーションに昇華していくかを考えたい」とまとめました。

「コミュニティがアクションする」チーム1

石川さんは「自分たちがアクションをするということなのか。それとも国民の皆さんにアクションしてもらうということなのか。どう考えるかですよね」と考え方のヒントをポツリと漏らします。そして「僕は、全5回が終わった時に社会実装を実現するというところまで『アクション』の幅を考えていただけるとめちゃくちゃ面白いなと思っていますので、ぜひよろしくお願いします」とメンバーを激励しました。

「コミュニティがアクションする」チーム2は、「広域プラットフォームやナレッジマネジメントに携わるメンバー」と「空間やワークショップの構想、場づくりに携わるメンバー」に大きく分けられるメンバー構成が特徴だったそう。前者からは「生み出して大きくしてもらったコミュニティからどんなノウハウを貯められるか、どんなノウハウを交換していけるか、といったアクションにつなげていくコミュニティを育てる」提案が、そして後者からは「場を盛り上げていく場で、チームとして何かできるのでは」というイメージが寄せられたといいます。

「コミュニティがアクションする」チーム2

ここでは江井さんが「会社というよりメンバーのパーソナリティが見えた説明になっていて、人としてどう交わってどう生み出していくのかという期待感が想像できた」と感想を述べます。そして「アクションチームなので、やはり社会実装に向かって、どうすればそれがみんなウェルビーイングになるのかというところまで目指してください」と背中を押しました。

まとめ

イベントの最後、石川さんは「本当に期待しかない。ここに集まってくれただけでも感謝しているけれど、参加した以上は、自分でも想像できないぐらいハジけた結果に辿り着いてほしい」と、あらためて参加者に発破をかけました。
次回は、この第1回で発表し、話し合った内容を踏まえて、「みんなで考える“みらいのコミュニティ” デザイン研究所」で目指すべきゴールを考えていく予定です。机上で考えるだけでなく、社会実装を目指して進み続ける参加者たちに、今後も注目していきます。

NAKANIWA

ライター:NAKANIWA

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