中央⽇本⼟地建物グループのR&D拠点「NAKANIWA」は、森林をイメージしたユニークなワークプレイスであり、オフィスの付加価値を高める空間づくりの実験の場でもあります。2024年秋にオープン1周年を迎えたNAKANIWAのこの1年のワークショップイベント等の取り組みや、今後の展望について取材してきました。
NAKANIWA は、中央⽇本⼟地建物グループが⽬指す「新しいワークプレイス」および「オフィスの付加価値向上に資する空間」を開発するためのR&D拠点です。
2023年10月のオープン以来、特に「インフォーマルな空間で⽣まれる付加価値」に着⽬し、社員が実際にワークプレイスとして利用する中で、居⼼地の良さやそこから誘発されるコミュニケーション・創造性・⽣産性・エンゲージメント向上などの可能性を検証しています。
株式会社パーク・コーポレーションが運営する空間デザインブランドparkERs(パーカーズ)は、株式会社竹中工務店と協働し、NAKANIWAの空間デザインを手掛けました。両社は山梨県⼭中湖村にある中央⽇本⼟地建物グループ保有林の間伐材を⽤いた内装づくりや同保有林の植生をイメージした植栽計画を立案。現在も植栽のメンテナンスやワークショップイベントなどを通じてNAKANIWAの取り組みをサポートしています。
NAKANIWAはこの空間を通じて、利⽤者が森林や⾃然とつながるきっかけをつくり、環境配慮やサステナビリティに対する意識を高め、そこから⽣まれる交流の促進を図っています。
NAKANIWAではこの1年、中央日本土地建物グループの社員のサステナビリティ意識やワークエンゲージメント向上などを目的としたワークショップイベントを開催してきました。
parkERsの堀部さんや後藤さんを講師に迎え、季節ごとの自然を感じられるテーマで開催してきたこのイベント。花や木に触れて和むだけでなく、保有林で採集してきた素材をアレンジメントに活用したり、展示イベントで使用した花材をドライフラワーにしてアップサイクルしたりと、サステナビリティについて考えるきっかけも随所に盛り込まれていました。
各イベントを企画した中央日本土地建物 設計・技術部の関根さんと事業統括部イノベーション開発室 松井さんに、この1年の様子などを伺いました。
「イベント開催の最初の目的は、この場所の周知や利用促進でした。今年度からは環境意識醸成も目標にしています。そういった目標に向かいつつも、普段接点のないような社員同士が仕事と関係なく出会ってコミュニケーションをとれる場を作れたのは良かったと思っています。
毎回参加者にアンケートをとっているのですが、はじめの1~2回はだいたい『イベントが楽しかった』といった感想が多かったですね。それが回を重ねるごとに『リフレッシュできた』と心身の切替えに関するコメントが増え、ここ最近は『初めて顔を合わせた社員同士で会話が弾んだ』といったコミュニケーションに関するコメントも見られるようになって、NAKANIWAという場所が徐々に私たちの目指す交流の場になってきているのを実感しています。
イベントを毎回楽しみにしてくれているリピーターも多いですし、新規で応募してくれる社員も予想以上に増えています」(設計・技術部 関根さん)
「生物多様性というと『守らなければならない』という責任の部分だけが意識されがちなので、保有林にしても、維持活動の中で社員が『生物多様性を自分ごと化して楽しめる』仕組みを作りたいと考えています。自分たちにとって意味のあることだと自然に考えられる状態を作る、そのきっかけをこのイベントで作れたかなと」(事業統括部イノベーション開発室 松井さん)。
1月に行われたワークショップイベント「和ハーブティを飲んで年始の身体を整えよう」をきっかけに、NAKANIWAの新たなコンテンツとしてハーブティが登場しました。ここからは、parkERs堀部さん、井上さんにもお話を聞いていきます。
「和ハーブティのワークショップは当初の予想に反して老若男女問わずさまざまな社員から応募があり、中でもミドルシニア世代の男性参加者が多かったのを覚えています。そこで『今日教わったハーブティをNAKANIWAで飲んでみたい』といった声が多く寄せられたことから、ドリンクカウンターに自分の好みで配合できるハーブティを設置することになりました。まさに、ワークショップイベントがきっかけでNAKANIWAに新たな変化が起こったわけです」(設計・技術部 関根さん)
「毎月3種類のハーブティをセレクトして提供しています。基本的には季節を感じられる特徴を持ったハーブティを選んでいますね。例えば夏には、ビタミン補給や、夏バテ予防に効果的な種類を取り入れたりして。
いわゆるハーブティのイメージとはちょっと違って、ドクダミの葉やスギナといった“庭の雑草”として見られがちな植物も積極的にセレクトしています。もちろんみなさんが口にするものなので庭から採ってきたりはせず、できる限り安全なものをご用意していますが、こうした身近な、いわゆる雑草と呼ばれるような植物も『実は飲み物として自分たちの体に取り入れられる』ことを知ってほしくて」(parkERs堀部さん)
「ふと見ると、いつの間にかハーブティがすごく減っていたりして、興味を持って飲んでもらえていると実感します。ハーブティを楽しみにしていて、種類が切り替わる月初には毎回NAKANIWAへ来てくれるコアなファンもいます。ちょっとしたことではありますが、ハーブティをきっかけとした会話などもあり、これまでにないコミュニケーションが生まれていることを実感しています。
社員向けのアンケート調査なども実施していますが、NAKANIWAでも担当者に『○○があるといいな』と気軽に声をかけてもらえればうれしいですね」(設計・技術部 関根さん)
2024年8月には、中央日本土地建物グループ社員の家族のうち、小・中学生と保護者を対象に「ファミリーデー(職場見学会)」が開催され、NAKANIWAも見学・ワークショップの会場となりました。企画した中央日本土地建物 総務部の池田さんと、parkERsのお二人にお話を聞きました。
社内からの要望をきっかけに、エンゲージメント向上の一環として総務部が企画した「ファミリーデー」。NAKANIWAには、2023年12月のワークショップ「クリスマスリースを作ってみよう」の直後から相談があったといいます。
「初めての試みでどれくらい応募があるか予測できなかったのですが、親子11組(親などの引率者17名、小・中学生16名)にご参加いただくことができました」(総務部 池田さん)
当日はまず、本社オフィスでのオリエンテーションからスタートし、社長室での記念撮影、家族の就業場所(オフィスフロア)の見学などを行いました。
「受入れ部署の役職員が快く対応してくれたほか『いい企画ですね』と声を掛けてもらえたので『開催できて良かった』と思いました。また、参加者のお子さまが真剣な面持ちで社員の話を聞いたり、ワークショップに取り組まれたりしていたことにも大変感心しました」(総務部 深澤さん)
最後に行われた、NAKANIWAでのワークショップも大変盛り上がりました。
「単に花を飾るだけではなく、『素敵な空間を作る』ことに日頃から取り組んでいる家族(社員)の仕事をイメージしてほしいと考えました。そこで、住宅ブランド『BAUS』のCM動画を観ていただいて『この素敵な住まいに飾るためのフラワーアレンジメントやテラリウムを作ってみよう』というテーマで取り組みました」(parkERs井上さん)
「夏らしいヒマワリを使ったフラワーアレンジと、涼を感じられる苔テラリウムの2種類を作ってもらったのですが、お子さんたちがとても真剣だったのが印象的でした。本番前はむしろ『途中で飽きてしまわないかな』と心配していたのですが……。テラリウムではピンセットを使う作業にすごく集中しているお子さんを、傍らでご家族が見守っていて。フラワーアレンジメントでは、ご家族と一緒に楽しそうにお花を選んでいましたね。お子さんが『こんなのができたよ!』と見せていたりして、家族の会話を楽しんでいる様子に、私たちも癒される思いでした」(parkERs堀部さん)
参加していただいたお子さん16名のアンケート結果からも、ワークショップの盛況ぶりがうかがえます。
最後にあらためて、この1年のNAKANIWAの取り組みや、それによってもたらされた変化について聞いてみました。
「私たちはイベントやその準備も含めて度々訪れているのですが、NAKANIWAはソフト面でもハード面でも進化しているのを感じますね。利用者が増えるといったこともそうですし、ハーブティが設置されたことも、イベントで使ったスワッグがそのままインテリアとして吊るされているのも……取り組んできたことの痕跡が少しずつコンテンツとして蓄積されて、空間としてのたたずまいがどんどん変わってきている印象です。
それによってNAKANIWAでの過ごし方のバリエーションも少しずつ広がって、そういう意味でも進化している。そう考えると、すごく面白い取り組みですよね。多分2年、3年経つとまた全然違う進化が見られるんじゃないかと」(parkERs堀部さん)
「そういう意味では、空間としての使い方も、窓に近いコアガリを『正面』にしたり、キッチンスペースを『正面』にしたりと、ワークショップイベントの内容に合わせて配置を変えて試しています。同じ空間でも『正面』が変わるだけで随分雰囲気が変わります。それによってどうコミュニケーションが取りやすくなるかも直感的に見えてきているので、可視化して空間づくりに活かしたいですね」(設計・技術部 関根さん)
さらに今後、NAKANIWAのコンテンツサービスとして取り組みたいことについても聞いてみました。
「NAKANIWAのキャッチコピーは『虎ノ門の森ではたらく』。つまりこの都心の真ん中に森を作るといったコンセプトを持っています。この1年、ワークショップなどで『森を知る』きっかけを作ってきたので、次のステップとして保有林へみんなで行って、実際に『森へ入る』体験型のワークショップイベントを開催したいですね。そうすることで、本当の意味でNAKANIWAが都心と森をつなぐハブのような存在になれるのではないかと思っています」(設計・技術部 関根さん)
松井さんによると、ワークショップに限らず、今後に向けてさまざまな取り組みが動き出しているとのこと。次の1年も、NAKANIWAから生まれる、そして育っていくコンテンツサービスに大いに期待できそうです。