中央⽇本⼟地建物グループのR&D拠点「NAKANIWA」は、森林をイメージしたユニークなワークプレイスであり、オフィスの付加価値を高める空間づくりの実験の場でもあります。
このNAKANIWAでは、中央日本土地建物グループの担当者が企画する、社員のサステナビリティ意識やワークエンゲージメント向上などを目的としたワークショップイベントが定期的に開催されています。今回は、「社有林の利活用」について虎ノ門でできることをテーマに、今後、製作するファニチャーを社員が考え、提案する「割りばし模型」の制作が行われた様子を取材してきました。
虎ノ門の森ではたらく「NAKANIWA」
NAKANIWA は、中央⽇本⼟地建物グループが⽬指す「新しいワークプレイス」および「オフィスの付加価値向上に資する空間」を開発するためのR&D拠点です。
2023年10月のオープン以来、特に「インフォーマルな空間で⽣まれる付加価値」に着⽬し、社員が実際にワークプレイスとして利用する中で、居⼼地の良さやそこから誘発されるコミュニケーション・創造性・⽣産性・エンゲージメント向上などの可能性を検証しています。 また、山梨県⼭中湖村にある中央⽇本⼟地建物グループ社有林の間伐材を⽤いた内装材や、社有林の植生をイメージした植栽を通して、利⽤者が森林や⾃然とつながるきっかけづくり、環境配慮やサステナビリティに対する意識醸成、そこから⽣まれる交流発展を図っています。
社有林の活用方法を探るワークショップが開催

初めに、司会・進行を務める投資開発部の常名さんより、本ワークショップ開催の経緯や目的が解説されました。
「2026年の2月に竣工予定の『REVZO新橋』は、中央⽇本⼟地建物グループの社有林を活用した木造木質化オフィスです。本プロジェクトを推進するうえで感じられた課題の一つに山で管理伐採された社有林材を都市で利用する実績が少ないことがあげられます。適正な保全活動のためにも、社員の方々の目線で『社有林材の活用方法』を探ってもらいたいと思っています。そして、アイデアを巡らせるなかで、木を使うことの良さに気づいてもらうことが今回の目的の1つです」
加えて常名さんは、今回参加者が制作した「割りばし模型」の作品から運営が実現可能なアイデアを選び、または組み合わせて、実物の組み立てを行う予定があることも発表。「今日皆さんが作ったものが、実現する可能性があるんです」と話し、参加者のモチベーションを上げていました。

本ワークショップは、サステナビリティ推進室・広報室・投資開発部・地域共生部で構成された10人弱の社員を中心に企画・実施。運営メンバーである地域共生部の樋渡さんは、平塚で社有林の保全活動を実施している経緯と現状、課題について解説しました。
「私たちは1968年に平塚の地を買収して以降、木の循環利用を意味する『森林サイクル』を目的とした保全活動を続けています。2024年には、環境省による『自然共生サイト』に認定されました」
『自然共生サイト』とは、自然生態系の保全活動が顕著な区域を認定する制度です。樋渡さんは、長く保全活動を続けてきた成果が実ったとしつつ、課題も紹介します。
「社有林の利活用の観点では、まだまだ解決しなければならない問題が山積みです。たとえば、木の老齢化対策や、保全活動の担い手不足、なにより一番の課題が『木材の利活用』です。輸入材と比べてコストが高い点が社会的な問題になっていて、当社社員も例外なく認識しておく必要があります」

続いて、プロジェクト開発部の武藤さんからも、不動産のこれからのあり方を軸にして思いが語られました。
「当社でも再開発を行うことはありますが、大型のビルを作っておしまい……という開発の仕方は、当社グループが目指す姿ではない。これからは、このエリアで生活する『人』にフォーカスして、仕事やプライベートを満喫できる空間を与える意識を持つことが大切です。ぜひ皆さんには、ビルの中に『憩いの場』となるようなスペースを提供するイメージで、楽しみながら制作にあたってもらいたいと思います」
「自己紹介&ブラッシュアップタイム」でグループ内の絆を構築

ワークショップは、2つのテーマに分かれ、以下の4つのグループで実施されました。
- Aグループ:⽇⼟地ビル14階待合いスペース(本社オフィスエントランススペース)にて、MORI&MOKUを発信する展⽰ブースづくり
- B、C、Dグループ︓暫定利⽤地で活用する組⽴ツールづくり
初めに実施されたのは、グループごとの自己紹介&作品発表です。事前に作成したワークシートを用いて、自分のアイデアをメンバーに発表するなか、和気あいあいとしたコミュニケーションが生まれていました。

次に、メンバーの発表を聞き刺激を受けた参加者たちがチャレンジしたのは、作品のクオリティをさらに高めるためのブラッシュアップ。作品の改善点を含めて、メンバーと話し合いながら試行錯誤します。
参加者の中には「はじめは1人掛けの椅子を作る予定でしたが、2人掛けの方が安定感が増すという意見を受け、デザインを変更しました」と早速メンバーのアドバイスを取り入れた方も。
自由な発想で「割りばし模型」の制作がスタート

各自が作品のイメージを膨らませたタイミングで、いよいよ「割りばし模型」の制作がスタートです。各グループには、進行チェックやアドバイスを行うサポーターが1人ずつ配置され、不明点を都度聞きながら制作を進めていきます。

模型は10分の1スケールで制作するため、大きさも定規で細かくチェックする必要があります。参加者の手元には、45×45材をモチーフにした木材や、繊細な作業に適したニッパーなどが準備されていました。

自由なアイデアを実現するため、色画用紙や両面テープなどの細かなアイテムも用意。司会・進行の常名さんからは、割りばしは両面テープで留め、余裕があればゴム紐を使うとスムーズだとアドバイスがありました。

それぞれが制作を進めるなか、「都会でも靴を脱いで生活したい」という思いから、ゆったりとくつろげるハンモックの制作をする参加者の姿が。木材の上にピンと張る方法を模索していると、メンバーから「こうしたらいいんじゃない?」とアドバイス。各グループ内で、自然と共同作業をする様子が見られました。

参加者の中には、設計の段階から完成イメージが鮮明になっている方も。
「今回は時間がなく一部しか制作できないものの、エリア全体をユニット化していく構想を持っています。木材で作ったベンチや花壇を自由に移動できるようにすれば、都市に森を形成しつつ、木々の成長を見守れるスペースが出来上がるかなと。『形状をシンプルにする』『豊富なサイズを用意する』ことを意識して、手軽に空間をカスタマイズできるようにしました。細かく形を変えていくことで、住む人が常に新鮮な気持ちになれるのでは、と思っています」

作業開始時は和気あいあいとした雰囲気だったものの、残り時間が少なくなると徐々に皆の表情も真剣モードに。NAKANIWAでBGMとして流れている「社有林 の環境音」が、参加者の集中力をさらに高めます。ルーバー制作のような細かい作業が必要な方は、手先に意識を集中させている様子が印象的でした。

一番早く作品を完成させた参加者に話を聞くと「デザインの時点で、簡易的に立体化できるよう意識したので、早めに仕上げられました」とのこと。スピード感のある制作を可能にする設計も、社有林をスムーズに利活用するために必要だと気づかされます。
それぞれの思いを言語化する発表タイム
作業タイムが終わり、いよいよ各作品の発表へ。⽇⼟地ビル14階、待合いスペースの展示ブースでの利活用をテーマにしていたAグループからは、独創的なアイデアが続々と発表されました。
注目を浴びていたのは、45×45の角材の形状を活用し、窓際にデザイン性のあるルーバーを設置する作品。周囲からアドバイスをもらい、企業活動を紹介するパネルも取り付けるアイデアを思いついたそうです。

そのほか、木材で作るビー玉コースターという面白いアイデアの作品も。ビー玉がカラカラと落ちていく様子とともに、自然と展示パネルへ視線がいくような工夫がされていました。
続いて、暫定利⽤地で使う組⽴ツールをテーマにしたB、C、Dグループが発表していきます。
Bグループからは、平塚の個性が出るような角材をふんだんに使いつつ、背もたれが1メートル程度ある椅子の発表が行われました。設計の段階から制作工程の効率化を考え、強度を保ちつつ工数を削減できる工夫が盛り込まれた作品であることが披露されました。

続いて発表されたのは、平塚や山中湖の空気を木から感じ取ることを目的とした「都会のど真ん中でくつろぎベンチ」というテーマの作品。完成品を眺めてイメージを膨らませているうちに、取っ手にドリンクホルダーを付けるというアイデアも思いついたそうです。
Cグループでは「毎日疲れているので、もう足を伸ばしたい。なんだったら横になりたい」という社会人の思いを具現化し、横になれるベンチの制作にチャレンジした作品を発表。他人の視線を気にせずに済むよう、ゆるやかな仕切りを付ける工夫も施されています。

そのほか、「エリアを最大限利用する」というアイデアをもとにした、キャスターで自由に移動できるベンチの発表も。「人とのつながりがもっと自由になるように」との思いも込められているそうです。
続くDグループの発表では、寒い時期にエリアを活用する構想からヒントを得て、大型のこたつが入ったテントを設計した方がいました。こたつを中心に人々が輪になることで、コミュニケーションが活発になることも目的の1つなのだとか。

続いて発表されたのは、「エリア価値の向上」「知名度向上」の観点で作られた、木材を利用したミニステージ。イベントやコンサートなどを開催できるようにし、広場に集まる理由の創出を目的としています。また、暗くなるタイミングでステージに幕を張り、ナイトシネマを放映するなどの工夫もしていきたいと語っていました。
すべての作品発表を終え、「MOKUワークショップ~平塚木材を虎ノ門でつかう~」の割りばし模型制作ワークショップは終了。

司会・進行の常名さんは「事前ワークを提出いただいた時点で、力作揃いだなと感じていました。タイトなスケジュールのなか、テーマに沿った作品づくりをしていただきありがとうございます。今回出たアイデアは、今後プロジェクトを進めていくうえでの『財産』です。投資開発部や設計・技術部など、さまざまな立場からの視点も反映し、「今後の検討や企画に活かしていきたいと思います」とコメントしました。

さまざまな作品やアイデアが参加者たちの感性を刺激
無事に制作と発表を終えた参加者たちに、ワークショップイベントの感想を聞いてみました。
「遊び心満載のアイデアを出している人が多くて、私自身すごく刺激を受けました。ひょっとすると、私はこれまでなんでも現実的に考えすぎていたのかも。この気付きを、社有林の利活用だけでなく、ほかの業務にも活かしていきたいです」
「好奇心をうまく形にしながら、木のぬくもりも感じてもらえるような作品が多くて驚きました。割りばしで何かを作る機会なんて、これから先もなかなかない体験なのでワクワクしながら制作できたと思います。作っているうちにもう1つアイデアができたので、自分でも試してみたいです」
「正直、社有林がどのように使われているのか、これまであまり深くは知らなかったんです。今回のように自分ごととして体験してみて改めて実感できたので、こういうワークショップで頭と身体を動かして考えることは大事だなと感じました」
まとめ
それぞれが制作アイデアを巡らせるなかで、社有林の存在がさらに身近になった今回のワークショップ。グループ内で意見を活発に出し合うなかで、「年齢や性別・所属を問わないコミュニケーション」が自然と生まれている点も印象的でした。
本ワークショップは、2025年10月6日(月)開催の第二回「MOKUワークショップ~虎ノ門でファニチャーづくり~」に続きます。今回の割りばし制作で感じた木材の良さ・課題点を座談会形式でフィードバック。そして各社員の職場など、身近なフィールドでの社有林の活用方法に落とし込んでいき、さらなる気付きへとつなげていく予定です。